『TOSAGAI 僕が知らない時間、聞いていない事柄』

■ミステリ■ 完結済

――僕がサークル室で見つけた人の耳は、かつてつきあっていたあの人のものかもしれない――

父親の事業の失敗から異なる道を歩むことになった僕と双子の兄カツ。カツは工場で働き、僕はその稼ぎで大学へ進学した。しかし、カツは仕事中の事故で右手の指を失ってしまった。そんな兄の犠牲の上に、現在の僕の生活は成り立っていた。

夏のある日、僕はサークル室でハンバーガー屋の紙袋に入った人間の耳を見つける。それが事件の始まりだった。その耳はサークルのメンバーの誰かのものらしかった。耳の持ち主探しはやがてひとりの女性へとたどり着く。それは僕がかつてつきあったことのある先輩だった。

僕が十三貝さんとつきあったのは、ある意味、カツに対する裏切りだったかもしれない。冬の、たった二週間の関係。僕は彼女を愛していたか、彼女は僕を愛していたのか。あれは本当に恋愛関係だったのか。

十三貝さんは行方が知れず、警察は僕が見つけた耳を彼女のものだと断定した。切断された耳は、文芸サークル「パブロフの猿」のメンバーたちを巻き込んで、彼らがかぶっている仮面を容赦なく剥がしていく。彼らの秘密が一つひとつ暴かれるにつれ、十三貝さんの秘められた正体も明らかになっていく。そして、バラバラに切断された彼女も発見される。

僕は十三貝さんを再構成しなければならないと事件に突っ込んでいく。兄のカツを引き込んで、十三貝さんは誰になぜ殺されたのか謎を解こうとする。その一方で、僕が犯人であることを示唆する様々な証拠が現れ、警察は僕を容疑者と見なすようになる。

僕はカツと思い出の廃墟へ隠れる。
はたして、僕は十三貝さん殺しの真犯人にたどり着けるのか。

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