セルパブ小説を読んでみよう 14 伊藤なむあひ『東京死体ランド』

今回は『このセルフパブリッシングがすごい!2019年版』ランキング1位の伊藤なむあひ『東京死体ランド』です。

とはいうものの、こんなランキングがあったんですね、へえ。どうしたらノミネートされるのでしょうか。ちょっと気になります。まずAmazonの売上ランキングでしょうか。

しかし、どうしたら売上を増やせるんでしょう? セルパブ作家は皆んな、知りたいことだろうと思います。

このあいだ読んだブログには「小説は売れないからダメだ。実用書を書け」みたいなことが書いてありました。いや、kindle本を売りたくて小説を書いているわけじゃないのよ、書いた小説が売れたらいいなと思ってkindleで出したの。根本のところを否定されてしまってはどうにもなりません。

で、『東京死体ランド』に戻りますと「ドナルド・バーセルミ」テイストのロードノベルです。長さからするとロード・ノヴェラって言った方がいいでしょうか。

どこがバーセルミ風だといって、何の説明もなくヘンテコな世界です。主人公「僕」は廃墟で「スピーカー」という男と暮らしています。「スピーカー」は音楽を聴いていないと死んでしまう男で、主人公はとくに理由もなく話すことができません。自分が思うことを他人に伝えられない制約を課されているわけです。また、主人公には「僕」にしか見えない妻子もいるのですが、彼自身は一度も妻子を持った覚えがなく、彼女たちは何度殺してもそれまでと同じようにそこにいる存在です。

世界はすでに滅んでしまったようですが、テレビもコンピュータネットワークもごく当たり前に機能しています。主人公たちもそれを不思議には思っていません。テレビからは「東京死体ランド」のCMがしきりに流れてきます。「東京死体ランド」はその名の示す通り死体のテーマパークです。

「スピーカー」はCMにイラついてランドを壊しに行くと言い出し、主人公は妻子をランドへ連れて行ってやろうと思ってついていくことにします。妻子を車のトランクに入れ、窒息するんじゃないかと心配しながら出発すると、外は死体だらけです。

どうやら生きている人間はむしろ珍しいようです。実際、話の中で生きているのは主人公たちふたりとリスが一匹だけ。死体は生きている彼らを仲間にしようと襲ってきます。

死体には死んでいる死体とそうでない死体がいて、死んでいない死体はときどき死んだふりをするので厄介です。死体のなかには自分が死体だと気付かず、他の死体を自分とは無関係だと思い込んで、自分が生者であるかのように振舞っている死体もあるようです。

主人公たちは襲い来る死体から逃れて、途中でブラックなバイトから逃げ出してきた死体も仲間にして、一路東京死体ランドを目指します。はたして目的の地では何が彼らをまっているのでしょうか。

もっと長くても面白く読める小説です。「無敵の人」の物語なのかな、と思いました。個人的には「スピーカー」というキャラクターが気に入っています。田島昭宇が漫画にしたら良さそうです。ぜひご一読を。https://www.amazon.co.jp/dp/B07H34PW74

僕の小説にも死体がぞろぞろと襲ってくるのがあります。僕のセルパブ本もお読みください。全部 kindle unlimited で読めます。

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