セルパブ小説を読んでみよう 38 浅倉喜織『双頭の夢魔』

久しぶりのセルパブ小説です。この間何をしていたんだ、本を読んでいなかったのかと言われるとたしかに読んでおりませんでした。ゲームばかりしてました。反省です。

昔、まだファミコンの頃、当時付き合っていた女の子に「あなたはゲームするために生まれてきたんじゃないでしょ」と怒られたことがあります。その子がいまどこでどんなおばさんになっているかは知りませんが、ぼくはときどきゲームに耽る癖があって、それで読んだり書いたりが怠りがちになるわけですが、ふとした一瞬に彼女の声がよみがえって夢から覚めるわけです。

で、今回はヤーナムの獣狩りの悪夢から戻ってまいりました。ちょっと前に読んだ悪夢のお話が今回のネタです。浅倉喜織『双頭の夢魔』。

昭和二十二年、電電公社に勤務する元通信兵の私及川は、戦友の長谷部からの久しぶりの誘いにのって上野の闇市で酒を酌み交わします。長谷部は私と同じ通信兵でしたが復員後はカストリ雑誌の記者になっていました。

話があるとのことだったので私が問い質すと彼は太平洋戦争中に夭折した天才日本画家鷹山恵月の話を始めます。狂死する直前の画家はある夢に悩まされ、その夢を見るようになって以来、ただ一つの絵しか描かなくなっていました。

長谷部はその死の謎を追っていると語り、私に鷹山恵月が遺したスケッチブックを見せます。どのページにも腰が結合した美しい双生児の少年が体を絡め合う妖艶な姿が描かれていました。長谷部は自分に何かあったらと言い残して、画家が夢を見るきっかけとなった川越の旅館を訪ねていきます。

それからひと月ほどして私は長谷部の同僚佐原から彼が会社を休み音信不通になっていると聞かされるのです。私が長谷部の下北沢の自宅を訪ねていくと、廃人のようになって引きこもっている彼に迎えられます。

長谷部は私に、川越で絵の結合双生児を見たと告げ、双子との爛れた愛欲の夢を語るのでした。夢で双子と会うために睡眠薬の力まで借りている長谷部はやがて、酒と睡眠薬のせいで半ば自死のように死んでしまいます。

スケッチブックを遺された私は、画家と戦友を死なせた双子の秘密を明らかにしようと、自らも川越の旅館を訪ねていきます。そして、そこで私もまた美しい結合双生児に出逢い、双子との淫らな夢の虜となってしまうのです。はたして私はこの連鎖する呪いから逃れられるのでしょうか。

美しくも淫らで悲しい結合双生児の悪夢の物語。悪夢というのもね、覚めると決まっているなら良いものですよ。ほんとに覚めるのであればね。

というわけで自作の宣伝です。お姫様が悪夢を見ます。主人公も悪夢を見ます。全部 Kindle Unlimited で読めます。じつは新しい小説を書いています。梅雨前には出す予定です。ちょっと自分にプレッシャーかけないと……へへへ。

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