先日、ZOOM飲み会なるものを初めてやってみました。帰りの心配しなくていいのは楽ですが、その分酒量が増えてしまうのが難ですね。
で、画面に映った友人たちを見ながら思ったのが、これってアリバイものに使えそうだよなってこと。きっともう書いている人もいるにちがいありません。
何で「アリバイがー」なんて考えたのかというと、昼間にこの小川修身『101点の犯罪:名探偵 風泉俊馬シリーズ』を読んでいたから。
霧島温泉で起きた転落死。警察は殺人の疑いを持ちながらも決定的な証拠がなく事故と判断します。死亡したのは大阪のコンピュータ会社「WEC」に勤務していたSE。その母親は警察の判断に納得せず、京都の探偵事務所に捜査を依頼してきます。
この事件を担当することになったのが、よれよれのコート、ぼさぼさの髪、失笑を誘う冴えない風采の風泉俊馬です。彼は被害者が大手のコンピュータ会社に引き抜かれようとしていたことを知り、「WEC」の社長山根に容疑を抱きます。しかし、山根には鉄壁のアリバイがありました。
よれよれぼさぼさというと、コロンボ警部を思い出します。この小説の風泉探偵もコロンボ型の名探偵です。もっとも、コロンボには犯人を油断させるためわざとピエロを演じているふうがありますが、この風泉探偵の場合は天性のよれよれぼさぼさ体質のようです。コロンボや古畑任三郎のように、犯人の身辺を嗅ぎまわり、犯人が披瀝する推理の齟齬をいちいち上げ連ね、犯人に疎まれながら追い詰めていく、というパターンは踏襲しているものの、しばしば捜査に行き詰まったり、推理の隘路にはまったりと、天才型ではない探偵の弱みも見せてくれます。そこがこの探偵の魅力ではないでしょうか。
また、コロンボや古畑は最初に犯行過程が明らかにされている倒叙ものでしたが、この作品はそこはちがっています。普通のミステリ同様、犯行過程は明示されません。犯人はわかっている。ただアリバイがある。アリバイ崩しをコロンボの手法でやっているのです。
読者は探偵と一緒に謎に挑むことになりますが、犯人側と探偵側の二視点で描かれていくので、話が単調にならず飽きることがありません。
101点の犯罪とは完璧すぎた犯罪。犯人が打った蛇足の一手から、風泉探偵が完全犯罪をどうやって崩すのか。お読みください。https://www.amazon.co.jp/dp/B082SBN141
自作の宣伝です。捕虜収容所が舞台のミステリです。ついでにお読みください。全部 Kindle Unlimited で読めます。