セルパブ小説を読んでみよう 10 東居英知『吸血聖戦:ヴァンパイア・クルセイド』

今回はラノベっぽいのを読もうと思って選んでみました。東居英知『吸血聖戦:ヴァンパイア・クルセイド』です。とはいうものの、最近のラノベは読んでいないので、どんなものがラノベっぽいと言えるのかいまいち怪しいです。とりあえず、kindle unlimitedの「ライトノベル」のジャンルからチョイスです。

「なろう」風な異世界転生ものやハーレムものは避けたかったのでこの一冊にしたのですが、思ったよりもソノラマ文庫の夢枕獏や菊池秀行風なテイストが強かったですね。

神代より、吸血鬼たちは人を糧とし、闇の世界に生きてきました。太陽の下に出ていけない代わりに永遠の命を持つ彼ら『忌の一族』は、折りあるごとに人の世を覆えしこの世界に君臨しようとしてきたのです。その都度それを防いできたのが『日の一族』でした。人と共存することを選んだ吸血鬼の末裔である彼らは、限りある命と引き換えに日の下で生きられるようになっていました。

二つの血統の長い闘争は現在まで引き継がれ、日の一族の若者である主人公周王慶譲は忌狩として忌の一族を討伐する役を務めています。彼は、日の一族とつながりの深い藤神信三の孫娘比奈子の警護を命じられます。十年前、幼い彼女は忌の一族に両親を殺され拐かされたのでした。日の一族の働きにより彼女は無事に救出されたものの、その際吸血鬼は十年後に迎えに来ると言い残していました。

十年ぶりに幼馴染みと再会した慶譲でしたが、大人となった比奈子は金にあかして酒浸りの荒んだ生活を送っていました。その夢に現れる吸血鬼蔵摩葬玄こそ彼女の両親を殺した吸血鬼であり、その討伐以外に慶譲が彼女を守る術はありません。

しかし、葬玄は慶譲がこれまで斃してきた吸血鬼とは格が違いました。滅ぼすには亡父が使った秘奥義「月華」を究めることが絶対と思われましたが、慶譲の守役かつ武芸の師である北辰はなぜか伝授を拒むのでした。

その上、比奈子が葬玄につけ狙われる理由もまだ謎に包まれていたのです。その秘密が明らかになったとき、慶譲は一族の掟に逆らっても比奈子を守ろうと強く心に決めます。

大人になった幼馴染みの心弾む逢瀬も束の間、葬玄の魔の手は無関係な人々まで巻き込んで比奈子に迫ってきます。慶譲も否応なしに最恐最悪の敵に立ち向かわざるをえないのでした。

「だれそれ(イラスト)」の記載がないから表紙絵も口絵も挿絵も全部著者の手になるものなのだと思われます。ラノベとは、物語と絵とが相補的に構成されたものであって、文章だけで成立するものではないということですね。

作者がこれをラノベとして出したということは、書いている最中からこういうものとして頭の中にあったということなんでしょう。書いている場面の映像というのは僕も思い浮かべていますが、イラストの形ではないです。この作者の頭の中ではもしかしてアニメーションが進行していたのでしょうか(僕は実写映画ですね。しかもカット割りされた)。興味あるところです。

読みどころはやはりクライマックスの主人公と敵の対決シーンでしょう。臨場感あふれる戦いをぜひ読んでください。https://www.amazon.co.jp/dp/B081FDJ7V8

というわけで、実写映画が頭の中で流れている僕の小説もぜひお読みくださいませ。全部 kindle unlimited で読めます。

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